落合陽一さんの「日本再興戦略」を読みました。
他の書評・要約では、ビジネス面にフォーカスして書かれたものが多かったので、ボクは政治面にフォーカスしました。
“現代の魔法使い”落合陽一さんが描く日本政治の未来について、みていきましょう。
落合陽一とは?
研究者、教育者、経営者、メディアアーティスト、父親などなど、様々な肩書きをもっていて、若干30歳ながら世界中から注目されている日本人です。
正式な肩書きとしては、筑波大学准教授、ピクシーダストテクノロジーズCEO、JST CREST研究代表、大阪芸大客員教授、デジハリ客員教授、未踏スーパークリエイター、電通イノラボ、、、、、と、本当に色んな業界で活躍されています。
彼が代表取締役CEOを務める会社「ピクシーダストテクノロジーズ」のホームページ上にプロフィールの完全版が載っているので、興味ある方はこちらからどうぞ。
日本再興戦略とは?
情熱大陸やNewsPicksで話題になり、世間から「現代の魔法使い」と言われている落合陽一さんと、「多動力」・「お金2.0」などのベストセラー本を連発している編集者・箕輪厚介さん、この2人がタッグを組んで生み出した本、それが日本再興戦略 です。
発売1日で8万部を突破するなど、今もなお売れ続けている大ヒット作品です。ぜひ読んでみて下さい。
落合陽一が描く日本政治の未来
今回は、この日本再興戦略で「政治」について語られている部分(P187~P197)をもとに、落合陽一さんが描く日本政治の未来をみていきたいと思います。 彼は、日本政治の未来における重要なポイントは以下の3つであると述べています。
1:国防
2:外交
3:民主主義
これらをテーマごとに詳しく見ていきましょう。
1:国防
主張「機械化自衛軍を導入すべき」
これからの国政を考える上で、重要性が高いのは国防です。なぜなら、地方分権が進み、日本が多様化していくと、中央政府の求心力が弱くなって、国防が弱くなりかねないからです。
戦争はよくないですが、日本を守るためには自衛軍は必要です。そして、その自衛軍強化の柱になるのは、自動化です。自動化すれば、日本は強い自衛軍をつくれます。自動化してミサイルを打ち落としたり、ロボットに自衛してもらえばいいのです。コンピューテーショナルな技術を使えば、それは十分に実現できます。
反論1「ロボットに戦わせるのは人道的でないのではないか?」に対する回答
ロボットに戦わせるのは人道的ではないと言われるかもしれませんが、自衛のためであれば、倫理的にも許容されると僕は思っています。なぜなら、相手が攻めてきているのに、人間が戦う理由はないからです。侵略を目論むような、非人道的な戦略にも人道的対応を行う必要があるのかという問題です。
反論2「そのロボットを使って暴走する独裁者が出るのではないか?」に対する回答
そのロボットを使って暴走する独裁者が出るのではないかという反論もあるかもしれませんが、そこは明確に憲法で縛れば良い。自衛以外にはロボット自衛軍を使えないという決まりにすればいいのです。
2:外交
主張1「インドと仲良くすべき」
外交でもっとも重要なのは、どこの国と仲良くするかですが、日本が最も仲良くすべきなのは、インドです。インドと手を組めれば中国を挟み込めるので、地理的に日本は有利になります。インドと共に、今まで通りアメリカとも戦略を共有していたら、日本の外交は安泰だと思います。
インドと仲良くするためにも、日本人とインド人はもっと互いのことを知るべきです。日本人であれば、「西遊記」で天竺から三蔵法師が来るのは知っていると思いますが、天竺はカルカッタ(インドの都市)のことです。インドは日本人にとって決してゆかりのない場所ではないのです。
主張2「中国と対立すべきでない」
外交面では、中国と対立しないことが重要なことなのですが、15年ぐらいの時間軸でみると中国は様々な面で大変なことになるだろうと思います。
最大のリスクファクター(リスクの要因)はやはり人口です。1人っ子政策でのつけで急速な少子高齢化が進みます。人口バランスが一気に崩れるのです。習近平政権の時代はまだ安定しているかもしれませんが、習近平以降は、本当に何が起きるのかわかりません。
僕が危惧するのは、「天安門事件3」のような出来事です。1989年の天安門事件は衝撃でしたが、あれと同じようなことが起こりえます。もし天安門事件3が起きたら、紅いシリコンバレーとして栄えている深圳や香港といった地域は緊張が起こるのではないでしょうか。その意味でも中国は本当にヤバいです。
3:民主主義
主張1「民主主義をアップデートすべき」
内政として取り組むべきは、民主主義のアップデートです。そもそも、日本に限らず、今の民主主義はスケールが大きすぎます。民主主義とは、最大公約数的な決定装置ですので、人口が増え過ぎて、多様な利害や意見を持つ人が増えてくると、成立しなくなってきます。すなわち、標準から外れたダイバーシティの高い人には、民主主義が適用されないのです。
だからこそ、今のマスが大きすぎるので、より小さく区切っていかないといけません。そのためにも、地方自治になっていくのは必然です。
日本では、「民主主義=多数決」と思っている人も多いですが、民主主義とは、民主主義(制度)と民主主義(理念)の2つに分かれています。民主主義(制度)のほうは多数決ではなくて、民主主義(理念)に基づいた政治形式という意味です。
民主主義の制度は多様です。多数決でもいいですし、全員一致で何か物事を決めるのもいい。多数決なら90%の人が賛成すればOKですが、10%の人が反対だったらOKを出さないという民主主義もありえます。人間が平等であるという民主主義の思想と、それを具体的にどう表現するかという民主主義の制度は別の話なのです。
主張2「地方自治を一気に推し進めるべき」
今の民主主義が抱える問題を解決するには、地方自治を一気に推し進めるしかありません。
日本の中でも、東京の常識は名古屋の常識ではないですし、新潟の常識ではありません。茨城の人は茨城でしか暮らさないし、東京に出ようとは必ずしも思っていません。お互い違って良くて、お互いを批判する必要はないのです。地方にはそれぞれの幸福の形があるのです。
それなのに、東京からマスメディアが発信する価値観を無理矢理根付かせようとするから、よくないのです。そのように、地方自治を許容すれば、日本の未来は明るくなります。
これから日本がフラットな地方自治へと回帰していくには、地方の首長が一番強い権力を持っている状態に持っていかないといけません。そのためには、地域政党を率いる人が、内閣総理大臣よりも偉く見えるようになっても良いかもしれません。
MY OPINION
以上が日本再興戦略の政治部分のまとめで、これからの日本の政治に対する落合陽一さんの意見です。ここからは個人的な感想。
国防での「機械化自衛軍」については、その発想自体が僕の中に全くなかったので素直に驚きました。流石、コンピューターサイエンスの人だな、と。ただ、もう少し具体的に踏み込んだ内容を聞けたら良かったなと思いました。
核ミサイルを全自動で打ち落とせるシステムを全国に配備するためには費用がいくらかかるのか、全自動は技術的に可能なのか、米国の核の傘がなくなったとき、核を持たないまま、機械化自衛軍だけで世界と対等に渡り合えるのか、などなど、もう少し具体的な所まで踏み込んだ意見が知りたかったですね。
まあ、この本はあくまでも日本再興「戦略」なので、日本を復活させる「ビジョン」を語った本としては十分な内容であり、とても魅力的な本だと思います。
外交での「インドと仲良くすべき」・「中国と対立すべきでない」については、これまでの歴史における日本と世界各国との関係性、日本とインドの関係性などをはっきりと把握できていないので、よく分からないと言わざるを得ません。インドのこともほとんど分かりません。これから勉強していきたいと思います。
民主主義での「民主主義をアップデートすべき」・「地方自治を一気に推し進めるべき」については大賛成です。地方自治を推し進めるべきというのは全くその通りだと思います。現在の日本の政策が、一部の官僚と政治家の判断によってそのほとんどが決められてしまっているため、官僚と政治家(特に官僚)に権力が集中し、森友で明らかになった公文書改竄問題や、野党の腐敗を生む原因になってしまったのだと思います。
コンピューターサイエンスの専門家でありながら、政治、教育、経営、アートなど多岐にわたる幅広い知識と実行力を備えた落合陽一さんの生き方は、10年、20年後のボクたちの生き方を体現しているのだと思います。
今でこそ多動な生き方をされている落合さんですが、なぜそれができるのかと言うと、「コンピューターサイエンスの専門家」という軸があるからです。だから、まずは自分自身が何を専門にして生きていくのかを決めること。それ以前に、自分が何に対してモチベーションが沸いて、自分は何を好きで何を嫌いなのかを見極めること。これが大事なのだと思います。
専門性がある人は、横に広げましょう。専門性がない人は、自分が好きなこと、嫌いなことを見極めて、好きなことに時間を投資しましょう。
あなたの未来が、日本の未来です。
日本の未来に希望が持てない方、どうやって生きていけば良いか迷っている方は、ぜひ日本再興戦略を読んでみて下さい。
では。